大学職員の職種の分類は「事務8割」「技術1割」「図書1割」業種・業務内容も紹介
大学職員の仕事は一般的には以下の分類になります。
- 大学職員の職種:事務職、技術職、図書職
- 大学職員の業種:教育・学習支援業
- 大学職員の職業分類:団体職員
- 教員以外の大学職員の割合は、おおよそ「事務8割」「技術1割」「図書1割」
- 大学事務の仕事は「総務・人事系」「財務・会計系」「教務・学務系」が大半
- 具体的な仕事内容、向いてる人を紹介
大学職員は、授業や研究を行う大学教員と比べて、働いている人の数が少ないです。多くの大学では、教員の半分以下の事務職員数となっています。
本記事では、大学職員の具体的な仕事内容について紹介していきます。
大学職員の業種と職種分類
大学職員は幅広い業種でいうと、「教育・学習支援業」に該当します。
採用された区分によって職種は異なりますが、「事務職・技術職・図書職」のいずれかです。
また書類で職業を記載する際に迷う方もいるでしょう。正確には以下の通りとなります。
- 国立大学職員・・・国立大学法人職員
- 公立大学職員・・・公立大学法人職員
- 私立大学職員・・・会社員もしくは団体職員
国立大学・公立大学の職員の場合は、「準公務員」「団体職員」と記載することもあります。
選択式で、公務員・会社員しかない場合は、会社員を選んでいます(その他がある場合は、その他を選び「団体職員」にしています)。
私立大学職員の場合、「団体職員」もしくは「会社員」でも誤りではありません。
大学の事務職の仕事:公務員に似てる
大学職員の8割が事務職です。大学の窓口にいるのが「事務職員」です。
事務職員の主な仕事は下記の3種類に分かれます。
- 勤怠管理、会議、広報などを担当する「総務・人事担当」
- 収入、支払いの処理を行う「財務・会計担当」
- 教室の管理や学生サポートを行う「学務・教務担当」
大学職員の仕事は、公務員に似ていると言われます。
総務担当と会計担当が多くいることや、利用者の問い合わせ担当がいること(大学では学務担当、公務員では市民サービス担当)が理由です。
筆者は国立大学で「総務・人事担当」「学務・教務担当」で仕事をしたことがあります。具体的な業務内容を解説していきます。
「総務・人事」の仕事:会計・学務を除いた事務仕事
「総務・人事担当」は会計と学務の仕事を除いた大学事務の仕事全般を扱っています。業務範囲は多岐に渡ります。
「総務・人事」の仕事内容
- 会議の運営準備
大学での意思決定は「教授会」などの会議で行われます。資料作成と会場設営などは総務職員の仕事です。 - 規程の制定
大学のルールは「就業規則」をはじめとして各種規程によって定められています。規程の整備、規程に照らし合わせて適切な仕事を行います。 - 外部機関との協定の締結
外部機関と共同で研究や教育を行うことがあります。契約書の内容を確認し、先方の事務と打ち合わせをします。 - ホームページの更新
学生への情報や研究成果をホームページに掲載します。広報戦略を考えるのも総務担当です。 - 実験申請書の確認
実験を行うのに、実験内容が委員会に承認される必要があります。委員は大学教員ですが、申請書類の準備は事務職が行います。 - 採用、退職の手続き
教職員の採用・退職時の手続きを行います。募集をして説明会を行ったり、人件費の計算などを行います。 - 各種保険加入の手続き
採用・退職時、また勤務形態が変わった時に社会保険、雇用保険の手続が必要です。関係機関に届け出を行います。 - 証明書の発行
雇用証明書や在留資格認定証明書の発行が必要な場合、人事台帳から証明書類を発行します。 - 職員の勤怠管理、出張処理
休暇取得の推進や出張時の勤怠管理手続きを行います。 - 郵便物の仕分け
大学には多数の郵便物が届きます。各学部や研究室に手紙を振り分けます。 - 外部からの問い合わせ窓口
教員の研究やキャンパスに関する問い合わせの窓口になります。
「総務・人事」の仕事に向いてるのは、「法令遵守」ができる人
総務・人事の仕事で重要なことは、ルールに則って仕事をするということです。
大学には多くの規程や規則があります。規程に沿って、必要に応じて「教授会」などの了解を得て業務を進めなければなりません。「勝手に自分の判断でやる」ことが職員として1番怒られることです。
ルールを確認して、然るべき部署に確認をとりながら仕事をすすめる力が求められます。逆にいうと、独自の効率的な方法を考えたり、独創的なアイデアは必要ありません。
業務の範囲は多岐に渡るので、多くの規程・規則を頭に入れて、ルールに則って迅速に処理する力のある人が向いています。
「財務・会計」の仕事:お金に関わる業務
お金に関することと施設管理に関する窓口となるのが「財務・会計」担当です。
「財務・会計」の仕事内容
- 物品の支払い処理
特に理系の学部では、多くの化学製品や実験器具を購入しています。物品の確認と支払い処理を行います。 - 出張の支払い処理
出張した場合は、提出された書類を確認して、規程に則って旅費の支払いを行います。 - 不適切な会計処理の確認
カラ出張、カラ注文が行われ、研究費を懐にいれる例が毎年のように起こっています。会計事務は不適切な処理がないように確認しています。 - 入学金・寄附金の受け入れ
学生からの入学金や授業料の受け入れ、企業や大学OBから寄附金をもらうこともあります。お金の受け入れに関する事務を行います。 - 施設管理
教室のエアコンやトイレの故障があったときに、確認や業者への手配を行います。 - 財務状況の整理
全てのお金の支出と収入をまとめて、大学の財務状況を公表しています。書類に間違いがないか細かく確認します。 - 研究費取得の申請書の確認、受入
大学の収入を支えているのが競争的研究費です。研究費取得の申請書に不備がないか確認を行うとともに、申請が承認されたあとの受け入れ手続きを行います。
「財務・会計」の仕事に向いてるのは、気づいて指摘できる人
会計処理では間違いが許されません。大学の教員と職員という関係だと、教員の力が強いため、教員の不正を見逃してしまう職員も少なくありません。厳しい目線で書類の確認や会計処理を行える人が向いています。
不適正な仕分けや会計処理を指摘し、適切に会計処理を行えることが求められています。「なんとなく」で仕事を行うのではなく、「怪しい」と思ったら必ず確認するという姿勢が必須です。
また、お金のことになると教員も少々無茶な要求をしてくることがあります。「ダメなことはダメ」といえる強いメンタルもあったほうがいいです。あとは正義感ですね。
【教員からの無茶な要求の一例】
- 学会発表のため、ビジネスクラスで出張したい
- 研究で忙しいため、研究費の申請書類の提出を1週間待ってほしい
- 公私混同と疑われかねない研究費の支出
総務担当・学務担当は窓口業務として丁寧さが必要ですが、会計担当は少しの間違いでも気づいて指摘する厳しさが必要です。
「学務・教務」の仕事:学生のサポート
「学務・教務」担当は、学生への対応と授業サポート、卒業判定、入試関係の業務などを行っています。
学務の悩みを解決する姉妹サイト「教務.com」も運営しています。教務.comでは、休学と停学の違い、公欠の基準など大学生向けの情報を発信しています。
「学務・教務」の仕事内容
- 学生からの生活相談、就職相談
学生からの生活相談(奨学金受け入れ等)や就職相談を受けます。就職相談は教員が受け入れることもありますが、事務でも受け付けます。 - 学生団体の活動の承認、体育施設の貸し出し
部活動・サークル活動の活動の承認と補助金の分配、体育施設の貸し出しなどを行います。 - シラバス、時間割の取りまとめ
教員がまとめた授業情報などをシステムや冊子で取りまとめます。 - レポート提出、成績の取りまとめ
授業が終わった後のレポート提出をまとめたり、成績情報がシステム上に正しくまとめられているか確認します。 - 卒業判定の確認
卒業時に取得単位数が足りているか、必修授業がとられているかを確認します。 - 学生情報のシステムへの入力
学生情報はシステムにまとめられています。氏名が変わったり、学年が進んでコースが決まったらシステムに入力します。 - 留学生の受け入れ、サポート
留学生の受け入れに力を入れている大学は多いです。外国語で授業のことを伝えたり、相談にのったりします。 - 願書受付と受付書類の送付
入試の時期には願書の受付などを行います。何度もチェックして、確実に処理を行います。 - 入試運営の管理
入試の際に試験監督を行うのは基本的に教員ですが、解答用紙の枚数を数えたり、遅刻者の受付などは事務で行います。
「学務・教務」の仕事に向いてるのは、おせっかいな人
学務の仕事は「教員や学生が作成した書類のチェック」と「学生が不満なく生活できるようにサポートする」のがメインの仕事です。
人の気持ちに寄り添える、おせっかいな人が向いていると思います。女性の学務担当職員は多いです。
総務担当、会計担当に比べると規則に縛られて行う業務が少ないため、細かい仕事が苦手な職員が配置されることも多いです。
学生が相手なので、大事にはなりにくいということもあるのかもしれません。
大学の技術職員の仕事:授業サポートなど
事務職の他に専門的な技術をもった職員(技術職員)が大学職員の中で1割ほどいます。
技術職は大学の施設維持のための「設備系」の職員と、実験・授業をサポートする「研究系」の職員に分かれます。
特定の学部の卒業など、専門的な資格を有していることを採用の要件としていることがほとんどです。
設備系の職員:電気・建築など設備維持を担当
大学は広大なキャンパスを持ちますので、適切な施設管理を行って、安全・安心な場所として維持することが必要です。大規模な工事は外注を行いますが、大学内に専門的な知識をもった職員を雇用しています。
設備系の職員には下記のような種別があります
- 建築系・・・長い歴史あるキャンパスは補修・建て替えが必要になる建物も多いです。
- 電気系・・・建物を建て替える際に必要な電気系統の知識も必要になります。
- 情報系・・・情報セキュリティを推進し、不正なアクセスがないように管理を行います。
大学は公的な機密情報を多く扱っているということもあり、工事等も含めて全てを外注することができません。内部に技術者を雇用して、できることは大学内部で行うということになっています(私立大学では全てを外注している場合も多いようです。)
実験関係の仕事:授業や研究指導のサポートなど
理系の学部に配属される技術職員もいます。授業や実験は大学教員が行いますが、危険な実験薬剤を使ったり、1人の教員では全体の学生実験の管理をできないことも多く、技術職員がサポートします。
- 機械系・・・工学部で扱う工具の使い方の指導や授業のサポートを行います。
- 生物系・・・化学物質の適切な管理、実験のサポートなどを行います。
実験関係の技術職員は基本的には学部や特定の研究室で勤務しています。
学部や先生の指示で、授業サポートなどを行っています。あくまで技術職員ですから、施設管理・安全な研究室の維持を目指しており、教員が行うような授業や研究で成果を上げることは求められていません。
大学の図書職員の仕事:図書の発注管理など
大学図書館で仕事をする「図書系職員」もいます。大学職員全体の1割未満です。図書職員の仕事には以下のようなものがあります。
- 図書の発注や契約
- 在荷図書の管理
- 図書館に来た人の窓口対応
図書館での仕事は「司書」という国家資格が必要で、司書資格所有者を採用しています(一部、司書資格なしで採用している非常勤職員等もあります)。
近年では、アクティブラーニングスペースとしての図書館の価値向上が注目されています。図書館で市民向けの公開講座を行っている大学も多いです。
図書の契約や管理など、ルーチン業務が多い図書職員ですが、利用者が増えるための施策を提案するなどクリエイティブなことも今後は求められていきます。
まとめ:大学には様々な職種・業種がある
大学職員の職種や仕事内容について紹介してきました。
まとめると以下の通りとなります。
- 大学職員の職種:事務職、技術職、図書職
- 大学職員の業種:教育・学習支援業
- 大学職員の職業分類:団体職員
多くの人が勤務する事務職の部署ごとの特徴などは以下の記事で紹介しています。
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